牡丹。
京都芸大を卒業し印刷会社のデザイン部を退社し、
絵のことを考えて家内と二人で歩いている時、
画廊の外面に飾られていた絵にくぎ付けになった。
雪景の天の橋立。
この絵のことを知りたくて知りたくて
家内に背中を強く押してもらい
生まれて初めて画廊に入った。
優しい画廊主と奥様は初めて会う私たちに
暖かいお茶とふくよかな笑顔で丁寧に真剣に教えてくださった。
なぜその絵が美しいのか、心に響くのか
店の奥まで何度も往復して色々な作品と資料も見せてくださった。
きびしい画肌で、ずっと気になっていた作家だった。
私は本当に嬉しかった。
虜になった。
画廊主は、見ず知らずの、何の経歴もない私に2枚の絵を依頼してくださった。
私は2ヶ月かけて、10号の絵を2枚描いた。
笑顔で受け取った画廊主は次の依頼をくださった。
この絵は、その頃の自分に挑戦している。
楽しかった。
手強かったり、新しい何かが加わったり、
また興味深い課題をみつけた。
牡丹。(485×545㎜/軸装)